引き算のその先に|写真に「余白」を残すという話

写真を撮るとき、つい画面いっぱいに被写体を入れたくなることはないでしょうか。
できるだけ多くを写した方が、魅力が伝わるよう気がする。私自身、以前はそう考えていました。それから引き算を意識するようになり、余計なものが写らないように気をつけて写真を撮ってきました。それでも、時々どこか窮屈な写真になることがあります。そんなとき、実は余白まで削ってしまっているのかもしれません。
あとから写真を見返したときに「どこか落ち着かない」と感じる写真は、主役の周りに余白が足りていないからかも。余計なものは写ってないのに、主役自身が画面いっぱいに迫っている写真。インパクトはあるけど何枚もいらない、そんな写真。
そんなときに意識するようになったのが、「余白をつくる」ということです。あえて何もない空間を残すことで、写真は不思議と落ち着きます。
今回は、引き算のその先にある、「余白」についての話。
なぜ余白があると、写真はシンプルに見えるのか
余白があると、不思議と視線が主役に引き寄せられます。
画面いっぱいに情報が詰まっていると、目はあちこちに泳ぎ、見ているだけで疲れてしまいます。でも少し余白があると、自然に主役の方に視線が戻る。視線は「何かあるところ」に向かうので、余白があるほど、主役が際立ちます。
実際、余白を意識して撮った写真のほうが、後で見返したときに「いい写真だな」と感じることが多い気がしています。
余白は「何もない場所」ではなく、主役を引き立てるための空間です。
余白は「引き算のその先」にある
これまで「引き算」について書いてきましたが、余白はその延長にあると考えています。
引き算が「何を見せないか」決めることだとすれば、余白は「意図して空間を残す」こと。ただの空間に意味を持たせることだと思っています。
たとえば、テーブルに置いたコーヒーカップを撮るとき。カップだけに寄って撮ると、カップはよく見えますが少し窮屈な印象になることがあります。カップだけドーンと見せたい場合はいいんですが…
そこで少し引いて、カップの右側に窓からの光が差し込む空間を残す。その空間には何も写っていないけれど、光の質感が伝わって、写真全体に余裕が生まれます。
慣れてくると、撮る前から「ここを空けよう」と決めてフレームを作れるようになります。


余白のつくり方
余白は難しいテクニックではありません。少しの意識で取り入れることができます。
被写体を少し端に寄せてみる

画面の真ん中に被写体を置くと、どっしりとした安定感が出ます。ただ、両端に空間が分かれるので被写体を大きく写すと結構圧迫感が出ます。あえて少し端に寄せることで、反対側に余白が生まれます。
どのくらい寄せればいいかは決まっていませんが、「少し物足りないかな」と感じるくらいがちょうどいいことが多いです。最初は大丈夫か?と思うかもしれませんが、試してみると余白のある写真の方が見やすいと気づくと思います。いつもより少し被写体を端に動かしてみる。その実験を繰り返すだけで、感覚はつかめてきます。
空や壁を使う

余白を作るには、情報の少ない背景を選ぶのが効果的です。空、壁、床、影。こうしたシンプルな要素は、自然と余白になります。
特に使いやすいのが「壁」です。白い壁でなくても、奥行きのない均一な面であれば余白として機能します。被写体の後ろに壁が来るように立ち位置を変えるだけで、背景の情報量がぐっと減ります。
空も同様です。建物や木を撮るとき、少し下から煽るように角度を変えて、背景を空だけにできれば、写真がすっきりするのが分かると思います。
思い切って「入れない」

余白を作る一番シンプルな方法は、「入れない」と決めることです。
何かを足すのではなく、「これは写さなくていい」と決めてみる。もう少し寄る、少し角度を変える、それだけで余計なものを写さずに済むことがあります。
難しく考える必要はなく、シャッターを押す前に「必要なものしか写ってないか?」と一度意識してみる。実際に余計なものをすべて写さないのは難しいと思います。それでも、撮る前にそう意識する習慣があるだけで、余白は自然と生まれてきます。
光で余白をつくる

光と影も、余白を作る大事な要素です。
影の部分は情報量が減るため、自然と余白のような役割を果たしてくれます。明るい主役と暗い背景など、コントラストがはっきりしているほど、視線が自然に被写体に集まります。多少余計なものが写っていても、影の中に沈めてしまえば目立たなくなる。これも光を使った余白の作り方です。
窓際の光が床に落ちる場面、木漏れ日が地面に作る模様。そうした場所では、影の部分がそのまま余白になっています。「光がどこにあたっているか」を意識することは、そのまま「どこに余白を作るか」を考えることとつながっています。
日常の中で余白を見つける

余白は特別な場所にあるわけではありません。
何かを撮るとき、「何を写すか」と同じくらい「余白」を意識してみる。それだけで、写真の見え方は少し変わってきます。最近は息子を撮るとき、これをよく感じます。画面いっぱいに撮った一枚も可愛いのですが、少し引いて、まわりの空間を残した一枚の方が、その場の空気ごと残っていると感じます。
余白のある写真は、あとから見返したときに「何を見ていたか」「何に心が動いたか」という撮ったときの気持ちや視線まで、そのまま残してくれる気がしています。
まとめ|主役・引き算・余白がそろったとき
写真は、たくさん写せばいいとは限りません。むしろ、少し余白がある方が見やすくなることも多いです。
主役を決めて、余計なものを引き算して、そして空間を残す。この3つが揃ったとき、写真はずいぶんシンプルになります。
余白は「何もない場所」ではなく、主役を引き立てるための大切な要素です。少しだけ空間を残してみる、それだけで「なんだかいい写真かも」と感じる写真が撮れるかもしれません。




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