カメラを使わなくなったあなたへ――「撮りに行かない写真」のすすめ

せっかくカメラを買ったのに、最近あまり使えていない。
そんな感覚、ありませんか。
「どこかへ撮りに行けたら使うのに」と思いながら、結局カメラはバッグの中か棚の上。出かける機会がなかなか作れなくて、気づけば何週間も触っていない——。
じつはその「撮りに行かないといけない」という感覚そのものが、カメラから遠ざかる原因になっているかもしれません。
この記事では、どこにも出かけない日に、家の中だけでカメラを使って写真を撮ってみた話をします。
出かけられない日は確実にある
子どもが小さいと、自分のタイミングで出かけることはなかなかできません。 天気が悪い日もあれば、疲れて今日はもう動きたくないという日もある。用事があって写真どころではないときもあります。
そういう日が続くと、カメラを触る機会がどんどん減っていきます。 「次の週末に写真を撮りに行こう」そう思って先送りにしているうちに、気づけば一ヶ月近く撮っていない、なんてことも珍しくありません。
撮らない期間が長くなると、不思議なもので「撮りたい気持ち」が徐々に薄れてきます。 カメラが趣味であるはずなのに、カメラを使うためのハードルがじわじわと上がっていく感じ。
そうなると、段々とカメラがただの置物になっていきます。
散らかったリビングで、いい光を見つけた日

ある日の昼過ぎ、リビングはいつも通り散らかっていました。 床にはおもちゃ。ソファには脱ぎっぱなしの服。 片付けようとしゃがんだとき、カーテンの隙間から漏れた光が床の一角だけに落ちているのに気づきました。
柔らかくて、少しだけ埃っぽくて、でもきれいな光。
特別な被写体は何もありません。 部屋の床にただ光が当たっているだけです。
カメラを持ってきてシャッターを切りました。
撮れた写真を見て思いました。 主役は被写体ではなく光だなと。
被写体を探していたのに、本当に撮りたいと思う心が動くのは光のほうだった。それはきっと「写真を撮りに行くぞ」と意気込んでいたら気づかなかったことだと思います。
家の中で撮れるもの
それから少し、家の中を違う目で見るようになりました。
部屋に入る朝の光:同じ部屋でも、7時と10時では光の色がまったく違います。時間を変えるだけで全く印象の違う写真が撮れておもしろい。
コーヒーカップと逆光:窓を背に置いたカップ。逆光で撮ると輪郭が光って、「いつも見ているカップ」が少し違うものに見えます。うっすらと立つ湯気まで写るとまた空気感の違う写真に。
子どもの手や足のクローズアップ:子どもの写真はついつい顔や全身を撮ってしまいがち。たまに小さな手のひら、丸い足の指をどアップで撮ってみると、手足だけでも可愛いなと感じます。ぐっと寄るだけで見慣れたものの印象が大きく変わります。
あえて、散らかったままで撮る:「片付けてから撮ろう」は、先延ばしのもとになります。散らかりの中に光が入ると、それはそれで生活感のある写真になります。整理しなくていいんです。




「何を撮るか」より「どう見るか」
家の中で撮り続けてわかったのは、問題は場所じゃなかったということ。
同じ部屋でも、見る高さを変えるだけで別の景色が生まれます。 立ったまま撮るか、息子と同じ視点で撮るか。それだけで、光の入り方やものの見え方が変わります。
時間帯もそうで、朝・昼・夕方では同じ窓からの光でも、印象は別物になります。 カーテンを少し閉めるか開けるかでも、写真の雰囲気はがらりと変わります。
「撮りに行く」写真の楽しさはもちろんあります。 でも「今いる場所で撮る」写真には、それとは違う発見があります。
移動しないからこそ、見えてくるものがあると思っています。
持ち出さなくても、カメラは小さいほどいい
家の中で撮るなら、大きくて重いカメラはむしろじゃまになります。
カメラを構えるというより、拾う感覚でいい。 そのためには、性能がいいことよりも手に取ることへのハードルが低いほうがいい。
スマホをポケットから出すような気軽さで撮れるカメラが、家の中では合っています。 私はSIGMA fpを本棚の一角に出しっぱなしにするようになってから、撮る頻度が明らかに変わりました。見た目も小さいし、シャッター音も静かなので、子どもの昼寝を邪魔しません。
スマートフォンでも、もちろん十分です。 大事なのは「すぐ撮れる状態にあること」だと思います。
外に出ない日もカメラを触ってみる
「写真を撮りに行けない」と思っている日も、じつは撮れる日でした。
写真を撮りに行こうと構えなくても、いつもの場所でいいんです。いい光は家の中にもあります。 特別な被写体を用意しなくも、生活の中にあるもので十分です。
必要なのは少しだけ視点と意識を変えること。
家の中でも気が向いたときに写真を撮るようになってから、カメラを触らない日がほとんどなくなりました。 「しばらくカメラ触ってないな」と思うことが、ずいぶん減りました。
別に出かけなくてもいい。 そう思えるだけで、少しカメラとの距離が近くなります。




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